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伝統織物
 
伝統工芸品から生活用品まで種類は豊富

カンボジアの伝統工芸品として人気が高いのは、シルク織物。機織りはかつては農閑期の女性たちの大切な仕事でした。カンボジアシルクには無地と絣があります。絣のモチーフは200以上もありますが、これらは書き記したものがあるのではなく、母から娘へと日々の作業を通して伝承されてきたものです。その繊細な模様と深みのある色彩に、目を見張らせられます。布そのものも豊富に揃っていますが、バッグや小物入れ、巻きスカートなどの完成品もあり、おみやげの人気ナンバーワン。ラタンなど熱帯樹林に生息する草木のつるを利用したかご類も豊富。ランチョンマットやトレーなどもあり、アジアフリークには見逃せません。マーケットにはこれらがたくさん並んでいます。また、クラフトセンターや養蚕センターでは作る過程を見学すると同時に、そこで作られたものを手に入れることができます。作り手の真剣な表情や手際のよさを見ると、ショッピングの楽しさも深まることでしょう。

 

 
 


クメール(カンボジア)の絣は、先染めが原則です。出来上がる模様や柄に合わせて、予め糸をくくってから、何度も何度も染めます。その複雑な模様や柄は、織り手の体(手と足)が覚えているので、代々母から娘へ伝えられたものでした。染めも、天然素材が使われ、 1.黄色(ブローフと呼ばれるカンボジアの樹皮)、2.赤色(ラック介殻虫の巣)、3.黒(茶)色(ラックの赤と藍の重ね染め)、4.緑色(黄色と藍の重ね染め)、5.藍、という具合に「五色の絣」が伝統的なものです。生糸は染まってから、やっと織りにかかりますが、3メートル余りの布が織り上がるまでに染めの段階を含めて2〜4ヶ月かかります。


   
  歴史

カンボジア織物は、もともとはインドの織物文化を受けて独自に発展し、19世紀には、タイなどの近隣諸国に輸出されるほどでした。その頃は200以上の絣柄がありましたが、今では複雑な柄は少なくなり、姿を消してしまったものもあります。絣柄は織り手の頭の中に記憶され、代々口承されてきました。しかし、長く続いた内戦で、多くの織り手が亡くなり、現在では高齢化も進んでいます。内戦前の貴重な織物は、海外の収集家や美術館の収蔵品となってしまっている場合も多いようです。

 
 
 
  種類

カンボジアの織物には、木綿か絹が使われます。代表的な木綿織物にはクロマー、絹織物にはサンポットホールやピダンがあります。以下にそれらを紹介します。
■クロマー

 カンボジアの人々が常に身につけているチェックの万能布です。用途は、日よけのために頭に巻いたり、タオル代わりに使用したり、赤ちゃんを抱いたり、物を運んだりと本当に様々です。

■サンポットホール

 約90cm×3.6cmの絹絣生地で、カンボジア語で「絹絣のスカート」という意味です。通常は女性の伝統的な民族衣装に仕立てられ、祝い事や宗教行事など特別なときに身につけられます。

■ピダン

 絣の一種で、仏教儀式などで壁に掛ける目的で作られたものです。寺を中心に天女、象、蛇など宗教的意味合いをもたせたモチーフが多く見られます。
 20年以上続いた内戦のさなかでも、人々は最後までピダンを守って逃げたといわれています。ピダンは、色ごとに括りを繰り返して何度も染めて織り上げるという緻密な作業から生まれる精巧な絵柄と美しい光沢を特徴とする、伝統的な織物です。この伝統は内戦で一度は失われかけましたが、現在ではこの伝統文化を残していこうという動きが活発になってきています。


 
 
 
 

染め

織物作業は、絹糸を準備するところから始まります。中でも染めは、糸の色を決める大切な作業です。カンボジアの伝統色は、青(藍)、赤(ラック)、黄(プロフーと呼ばれるオトギリソウ科の樹皮)、緑(黄と青の重ね色)、黒(青と赤の重ね色)の5色です。これ以外にも染料の原材料はたくさんあります。植物の葉を用いるものはバナナ、ハス、藍、チャットなど、樹皮を用いるものはジャックフルーツ、スダウ、タベーン、プリンなど、果実で染めるものはヤシ、マックルア、クレースラモー、プライタナウなどです。採取時期や場所によって種類や色合いも違いますが、ベージュ、黄色、ピンク、紫など様々な色を出すことができます。

■染めの作業手順

1.

 

絹糸の精錬

生糸に含まれるセリシンという膠質を除去する作業をいいます。こうすることによって虫に食われにくくなり、絹糸特有の光沢が生じます。

2.

絹糸染め

・媒染…天然染料を繊維に固着させて発色させる作業です。CYRでは、みょうばんと鉄さびの2種類の薬品を媒染剤として使用しています。

・たて糸染め…カンボジアの絣織りでは、無地のたて糸を使用します。染めの方法は、染料によって異なります。例えば藍には、藍の葉をそのまま使用する「生葉染め」と、葉を発酵させて染める「発酵建て」の2種類の方法があります。また、ラックであれば、熱湯と混ぜ合わせて漉すと言う作業を繰り返してできる液で絹糸を染めます。

 
 
 
 

織り

カンボジアの絹織物は、三枚綜絖による綾織りが基本です。三枚綜絖とは、たて糸を上下させる織機の一部品である綜絖を3枚使用する方法のことで、綾織りとは、たて糸とよこ糸が2本ずつ表に浮いてクロスしている織り方のことです。
 こうした織り方の中でも、よく知られているのが絣織りです。絣織りとは、織り上がる模様や柄に合わせて糸を括り、色を染め分ける伝統的な織物です。カンボジアの織物では、横糸を染める横絣が特徴的です。

■織りの作業手順

1.

たて糸巻き…糸車に絹糸をかけ、同じ速さで糸を竹製の大管に巻き取ります。

2. 整経…織るのに必要なたて糸を台に張っていく作業のことです。
3. 千巻き…整経によって準備されたたて糸を巻き取っていきます。
4. 筬通し…筬とは、織り幅を一定にして、よこ糸を打ち込むための織機の部材です。筬通しを使ってよこ糸を筬の羽の隙間に通していきます。
5. 綜絖通し…ナイロン糸と木の棒で、1本1本のたて糸をすくいながら綜絖を作ります。
6. よこ糸巻き…再び糸巻きで、柄によって染め分けたよこ糸を小管に巻き取ります。
7. 織り…杼というよこ糸が巻かれた小管を入れたものを綜絖の間に投げ入れ、たて糸によこ糸を通していきます。
上のように、作業は大きく7段階に別れますが、(5)までが織り始めるまでの準備です。ここまでの作業で、織り全体の約8割を占めます。(2)整経は、研修生が最も苦労する作業の一つで、丸一日かかることもあります。また、(5)の綜絖通しにも数日を要するのが普通です。どの作業にも正確さが必要とされ、織りの作業全体で見ると、サンポットホール一枚を完成させるのには2ヶ月以上かかります。
 
       

 


ガレリー
 

 

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